銃姫@

 【銃姫@】  管理人評価:100点

【レーベル】 MF文庫  【発行】 04/04/30  【ページ数】 本編290P
【著者】 高殿円  【イラスト】 エナミカツミ
【作品のキーワード】 異世界,ファンタジー,魔法,銃,戦争,少々恋愛要素有


世界観は近代イギリスといったところでしょうか。ベースは産業革命辺りの雰囲気。 といっても銃と魔法の物語。この世界のルールとして「魔法を銃で撃つ」という 概念があります。戦争ばかりしている人間に失望した神様が人間から魔法を取り上げて しまった・・・ との伝説が出てきますが、何れにせよ自力で魔法を撃てなくなった人間は 魔力自体を弾丸に封じ込める技術を確立。勿論その力を行使・維持出来るのは限られた人間であり、 魔銃士(クロンゼーダー)と呼ばれる存在。主人公らもそうした力を持つ者で、 まだあどけなさが残る少年 "セドリック" ,明朗活発な少女 "アンブローシア" は共に 魔銃士。セドリックの姉でありシスターの "エルウィング" は戒律で戦闘が禁じられている為、 魔力はありますが魔銃士という存在ではありません。セドリックとエルウィングは共に 同じ聖教国の人間で、そこから【銃姫】と呼ばれる「世界を破滅に導くとされる 兵器」を盗み出した同郷の元仲間 "オリヴァント" という男を追い求める旅に出ます。 アンブローシアは別の目的で同行していますが、これはアンブローシアの正体に関わるので ここでは伏せておきますね。ちなみにセドリックも出生に大きな秘密があり、エルウィングもただの シスターではありません。この辺りを紐解きながら物語を進めていくのが当面の流れに なりそうです。それ位「謎の伏線」が沢山見え隠れするのですよ。
さてさて。ここまでの概要を見ると、魔法の味付けこそ特殊ですが 割と王道ファンタジーにも見えるかと思います。けれど・・・ こんなにも 爽快感と読み応えのあるファンタジーノベルに出会ったのは本当に久しぶりでした。 べた褒めかも知れませんがそれ位に感動します。ただ魔法をドンパチやって世界を救う ファンタジーではありません。主人公とヒロインら三者三様、少しずつ見えていく旅の目的・抱えている心の闇。 時には仲間同士でも強くぶつかり合う心の奔流。とにかくシナリオが深くて濃厚なんです。 本巻では、特に欲と戦争にまみれた世界ならではの理屈では救えない命の大切さ、 運命への憎しみ、それに相対する事での心の邂逅等が描かれるエピソードがあります。 個人的には、アンブローシアの心情を描くのが中心とも感じられる展開でした。 最後、まるで恋愛映画のラストシーン(滅茶苦茶言いたいけど我慢!!)の様な、 セドリックとアンブローシアの「再会」は超必見です。最後このシーンを見る事で、 もう死ぬほど爽快で幸せな気持ちになれました。あとがきを最初に見る方、うっかり最後辺りを チラ見しちゃわない様に気をつけてね!(笑)




千の剣が舞う空に

 【千の剣が舞う空に】  管理人評価:100点

【レーベル】 ファミ通文庫  【発行】 08/02/12  【ページ数】 本編245P
【著者】 岡本タクヤ  【イラスト】 柏餅よもぎ
【作品のキーワード】 現代,仮想現実(オンラインゲーム),心の逃避と回帰,友情


空手で世界最強を夢見ていた主人公 "速見 真一" が交通事故で夢絶たれ、その夢の矛先をオンライン格闘ゲームで 最強となる事へと向けていくお話。高校に入学しても誰とも打ち解けず、誰とも関わらず、 ただ己の目的を達するが為に生きている真一。何となく引き篭もりライフを連想しがちですが、 しかし断言します。本作は物凄いシリアスです。彼が抱えた冷たい過去・社会から抜け落ちてしまった 心を取り戻し、彼自身が新しい世界を切り開いていく成長物語です。尚、ヒロイン役の "真山 明日美" は 主人公の対極の様な存在。クラスでは誰にでも親しまれ、頼られ、人気者の美少女です。 けれど彼女もある「仮面」を被って生きており、その「仮面」の元となる辛い過去があります。 彼女も真一と同じオンライン格闘ゲームに参加しますが、それは彼女にも、彼女なりの、 過去を乗り切る為の目的がある為です。


私がこの小説を読んで感じる事。二人は形は違うけれど、どちらも若い人生の中、 実社会でも起こり得る挫折や逃避を体験しています。それを分かり易く体現していました。 話が進めば進むほど、真一と明日美が打ち解けるほど、二人を取り囲む世界は変わります。 あるいは二人から見る世界が変わるのかも知れません。 人と関わる事の大切さ・優しさ・友情等を段々と真一が理解していくさまと、 殻を打ち破った明日美の晴れ渡っていく心の進展。読んでいてとても清々しい。 題材がオンラインゲームですし、そのテーマ故にマニアックなプレイ表現や先入観として 入り辛い印象も有り得ますが、私が感じたこの作品の面白さは人との繋がりの大切さ、人生を強く生きる勇気です。 まぁライトノベルでこんなコト言うのは変かも知れませんけどね(笑) でも、本当にそう思ってしまいました。 私もMMORPGをプレイする一人として、オンラインという場所が現実逃避の場所になり得る事、 心の拠り所となる事は理解出来ます。その気になればそれだけ依存出来る場所ですしね。 劇中、そんな場所に留まった心の闇を乗り越え、人として大きく成長していく二人のドラマは 大変に見応えがあります。但し、それだけ深く関わっている二人にも関わらず 恋愛要素が一切発生しないのはライトノベルとしてはある種不健全かな?(笑) ただ、本編ラストで真一と明日美はある「運命的な出会い」を経験します。 そこから始まる何か、があるかも知れませんね。




リヴァースキス

 【リヴァースキス】  管理人評価:100点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 07/06/25  【ページ数】 本編313P
【著者】 佐野しなの  【イラスト】 Fuzzy
【作品のキーワード】 現代,コメディ,ファンタジー,恋愛,美少女


ここ少しの間に何冊かの満点が続いており、どうやら私、ツイてる様です。 とにかく最初から最後まで笑いっぱなしの作品でした。小説読んで爆笑・・・ って、実際「本当に声が出てしまうほど」笑える作品なんてそうそう無い。 文字だけで完全に人を笑わせるのって絶対に難しいと思うし。うん。 丁度外出した際に喫茶店でしばらく読んでいたのですが、笑いを堪えつつ (さすがにそこでは声出せないし;)ニヤニヤしてたので相当変な客だったのでは(苦笑;) ある朝、目覚めると高校生の主人公 "末村 膳" は女の子(しかも物凄い美少女!!) になっており、更にベッドには本来自分のあるべき姿【男の体】を発見。 しかしその体には "トモヨシ" と呼ばれる別の魂が憑依してしまい、その彼は 何と主人公に一目惚れ(笑) キスをする事で成仏出来ると主人公に迫りまくる トモヨシと、そんな事が出来るかとアノ手コノ手で抵抗必死の美少女版主人公。 更にはそんな見目麗しい主人公を親友までもが好きになってしまい・・・。 という感じの超痛快ドタバタ(ラブ?)コメディです。又、劇中の登場人物、 その一つ一つの個性付けが驚くほど完璧、とにかく最高だったと思います。 私がここまで笑えたのは、著者の非常に巧みな話術というか、終始行われる 主人公からのトモヨシや周囲の人々に対するツッコミ、それら文章の表現力が 物凄く上手かったからだと思います。読めば読むほど引き込まれました。 そんな中、さりげなく盛り込まれた家族愛のテーマや、本作内で撒かれた伏線(何故不思議が 起こったのか)に関する分かり易い解答、又主人公がトモヨシに抱きつつある 「友情とも愛情とも言えない複雑な感情」の見せ方。 どれも大変素晴らしいメリハリとなっております。尚、明るい本作に相応しく、 とても気持ちの良いラストも迎えられたと私は思います。とにかく明るく楽しく、 笑っちゃうけどバッチリ感動もある、何だか贅沢な一冊ですよ♪




12月のベロニカ

 【12月のベロニカ】  管理人評価:100点

【レーベル】 富士見ファンタジア文庫  【発行】 03/01/15  【ページ数】 本編285P
【著者】 貴子 潤一郎  【イラスト】 ともぞ
【作品のキーワード】 異世界,ファンタジー,中世,騎士,友情,永遠に誓う愛


私が過去に読んできた数多のライトノベル内でもトップクラスだと断言します。 読んでいる途中、気付かない間に文章のトリックにはまり、そしてそれに 気付いた時に氷解していく謎、想い、悲しみ、高度な構成力に感服致します。


世界を司る女神ファウゼルの依代(よりしろ)として "死の直前迄眠り続ける宿命" を背負う事と なるヒロイン "アマンダ" と、その幼馴染であり、ただもう一度彼女に出会う為だけに 命懸けで地位と名誉のある "騎士" の位にまで登り詰める主人公 "フレイル" 。 更に彼は生涯を賭して依代を守る事を許される不死の守護者「ベロニカの騎士」をも目指す。 劇中、「ベロニカの騎士」は名誉職であり多くの騎士にとっては名声を得る為の手段なのですが、 主人公フレイルにとっては、アマンダの運命を変えられないならせめて愛する女性を その手で生涯守り続けたい・・・ という純粋な強い想いがあります。 やがて二人は運命的に再会を遂げ、秘めている想いは深い愛情となり、 共に愛し合える僅かな時間を慈しむ様に過ごします。しかし女神ファウゼルの依代は この世の象徴とも言える存在である為、アマンダが覚醒する前に手中に収めようと 他国からも執拗に狙われ続け、それを命懸けで護衛する事となる騎士団。そんな攻防の最中 「女神から与えられた運命」・・・とでも言うのでしょうか、奇跡の偶然で出会う事となる 謎の隻腕剣士 "ハキュリー" 。その彼が背負っている禁忌とも言える過去、 そこに秘められた真実。あまりにも深く切実なる想いが主人公らと 交錯していきます。具体的に「何故彼らが出会った事が奇跡と言えるのか」は ここで明かす事は出来ませんが、やがて全てが一つに繋がり何もかもが打ち解けた瞬間、 胸の奥が本当に熱くなってしまいました。是非もう一度読みたいと思える作品です。 絶対に損をしない一冊なので自信を持ってお薦め致します。




バニラ A sweet partner

 【バニラ A sweet partner】  管理人評価:100点

【レーベル】 スーパーダッシュ文庫  【発行】 未確認  【ページ数】 本編349P
【著者】 アサウラ  【イラスト】 高山瑞希×曽我部修司(シトロネット)
【作品のキーワード】 現代,ガンアクション,逃避行,美少女,女性同士の友情・愛情


最初は可愛いヒロインとガンアクション…というくだりに興味を持っただけ、 という実にミーハーなファーストコンタクトを果たした訳ですが(笑) いざ読んでみると、一寸の隙も無い、素晴らしい完成度に唖然としました。 女子高生である海棠ケイと梔ナオが、子供ながらにどれだけ深い理由で、 そして自分達にとって必要な闘いを挑む事になったのか・・・。二人にはそれぞれ ある理由から自らの家族に対し非常に強いトラウマを抱えており、 その殻を唯一打ち破る事が出来る「力」(=銃) を偶然手に入れた彼女らは、 お互いに強く決断した上でその「力」をしかるべき相手らに行使していきます。 「力=銃」という形は、必ずしもそうであるべき必要性は無かったのでしょうが、 ただ彼女達にとっては偶然手に入れた銃こそが救世主の様に見えたのかも知れません。 この作品の醍醐味は、彼女らが闘う相手は決して「巨悪な組織」という類ではなく ただ自分達にとっては避け得ない敵である・・・ という点です。 子供故の凶暴性が垣間見える事もありましたが、彼女らは決して狂気に染まっている訳ではありません。 ただ、運命に抗う術こそが必要だったのです。やがて二人は警察にも追われ、先の見えぬ逃避行が始まります・・・。 私は余り泣ける性格ではありませんが、代わりに心では泣いてしまいました。 そして更なる見所として、勿論ウリであるガンアクションの描写も素晴らしいのですが、 何より彼女達が抱えている心情を汲み取り、避け得ない逃避行の終わりを 見届ける事にあります。彼女達の迎える「精一杯の最後」を感じて欲しいのです。 ちなみに本作はイラストも抜群に凄いです。作品とイラストが完璧にマッチする ノベルなんてそうそう出会えないですよね。間違いなく最高の一冊です。 一部で、やや残酷な描写もあるので、その辺りは覚悟しておきましょう。




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