銃姫A

 【銃姫A】  管理人評価:**

【レーベル】 MF文庫  【発行】 04/07/31  【ページ数】 本編325P
【著者】 高殿円  【イラスト】 エナミカツミ
【作品のキーワード】 異世界,ファンタジー,魔法,銃,戦争,少々恋愛要素有


まだ前回感想のΘ(シータ)も書き上げてないのにAに進んじゃってますが。今度のAも半端じゃなく面白い! 長いシリーズものってどこで崩れるか心配なんですけど、不思議と安心感あるなぁ・・・。 ちなみに銃姫Aの劇中、本当に涙を流して泣いてしまったシーンがありました。。 感想など、期待してお待ち下さいませ〜。




Θ11番ホームの妖精

 【Θ(シータ)11番ホームの妖精】  管理人評価:95点予定

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 08/04/10  【ページ数】 本編321P
【著者】 籐真千歳  【イラスト】 くらぽん
【作品のキーワード】 近未来,架空の東京駅,メカ,ハードSF,美少女


*まだ編集予定です。評価点数は暫定です*


うーんとですね、ノベルのジャケットとか見ると、もう誰が見ても世界観は 近未来版ARIAなんですよ。分からない方向けに言いますと、完全に癒し系というか、 ハートフルコメディというか・・・様はほのぼのした感じの。でもフタを開けてみると 驚きの超ハードSF。小難しい用語も設定もばんばん出てきて、ヒロインのT.Bも 命がけでホームを様々な脅威から守るお話なんですよ。勿論ほのぼの要素もあるんですけどね。 は〜、実はこれもうすでに読破してて、次は「銃姫A」に入ってるのですが(笑) ちょっと時間無かったので もっと詳しい取り纏めは又次回行います。一言先に結果言うと、超〜 面白かったですよ!! 前述の通り SF要素バリバリで、異次元空間やらサイボーグやら戦闘機やらも出てきますが、 読めば分かりますが全っ然チープになってないんですよ。物凄い考証済というか説得力あるというか ラノベだから適当に作りました感が全く見られない設定力。だから楽しかったのかも!




銃姫@

 【銃姫@】  管理人評価:100点

【レーベル】 MF文庫  【発行】 04/04/30  【ページ数】 本編290P
【著者】 高殿円  【イラスト】 エナミカツミ
【作品のキーワード】 異世界,ファンタジー,魔法,銃,戦争,少々恋愛要素有


世界観は近代イギリスといったところでしょうか。ベースは産業革命辺りの雰囲気。 といっても銃と魔法の物語。この世界のルールとして「魔法を銃で撃つ」という 概念があります。戦争ばかりしている人間に失望した神様が人間から魔法を取り上げて しまった・・・ との伝説が出てきますが、何れにせよ自力で魔法を撃てなくなった人間は 魔力自体を弾丸に封じ込める技術を確立。勿論その力を行使・維持出来るのは限られた人間であり、 魔銃士(クロンゼーダー)と呼ばれる存在。主人公らもそうした力を持つ者で、 まだあどけなさが残る少年 "セドリック" ,明朗活発な少女 "アンブローシア" は共に 魔銃士。セドリックの姉でありシスターの "エルウィング" は戒律で戦闘が禁じられている為、 魔力はありますが魔銃士という存在ではありません。セドリックとエルウィングは共に 同じ聖教国の人間で、そこから【銃姫】と呼ばれる「世界を破滅に導くとされる 兵器」を盗み出した同郷の元仲間 "オリヴァント" という男を追い求める旅に出ます。 アンブローシアは別の目的で同行していますが、これはアンブローシアの正体に関わるので ここでは伏せておきますね。ちなみにセドリックも出生に大きな秘密があり、エルウィングもただの シスターではありません。この辺りを紐解きながら物語を進めていくのが当面の流れに なりそうです。それ位「謎の伏線」が沢山見え隠れするのですよ。
さてさて。ここまでの概要を見ると、魔法の味付けこそ特殊ですが 割と王道ファンタジーにも見えるかと思います。けれど・・・ こんなにも 爽快感と読み応えのあるファンタジーノベルに出会ったのは本当に久しぶりでした。 べた褒めかも知れませんがそれ位に感動します。ただ魔法をドンパチやって世界を救う ファンタジーではありません。主人公とヒロインら三者三様、少しずつ見えていく旅の目的・抱えている心の闇。 時には仲間同士でも強くぶつかり合う心の奔流。とにかくシナリオが深くて濃厚なんです。 本巻では、特に欲と戦争にまみれた世界ならではの理屈では救えない命の大切さ、 運命への憎しみ、それに相対する事での心の邂逅等が描かれるエピソードがあります。 個人的には、アンブローシアの心情を描くのが中心とも感じられる展開でした。 最後、まるで恋愛映画のラストシーン(滅茶苦茶言いたいけど我慢!!)の様な、 セドリックとアンブローシアの「再会」は超必見です。最後このシーンを見る事で、 もう死ぬほど爽快で幸せな気持ちになれました。あとがきを最初に見る方、うっかり最後辺りを チラ見しちゃわない様に気をつけてね!(笑)




リリスにおまかせ!

 【リリスにおまかせ!】  管理人評価:90点

【レーベル】 ファミ通文庫  【発行】 08/06/10  【ページ数】 本編249P
【著者】 麻宮楓  【イラスト】 梱枝りこ
【作品のキーワード】 現代,天使と悪魔,ファンタジー,ラブコメ,美少女


古の天使対悪魔の大戦は天使が勝利し、悪魔の長たるサタンは深手を負って眠りに就く。 そして現代、微弱な力しか持たないサタンの力を蓄える為、使い魔のリリスと徹底した 小さな悪事を繰り返すという大爆笑コメディです。サタンはロリっ子でリリスは高校生位の 美少女なんですが、リリスはもうサタンのやるコト成すコト全てベタ褒め、どんな失敗でも 悪事でも超ポジティブな解説付きで絶賛します。この掛け合いが中盤まで占めるという 思い切った流れで非常に楽しめます。面白すぎです。又、街中で偶然出会った "愛沢 悟" という 男子がイエス・キリストの生まれ変わりだと知ったサタンは彼を手中に収める為、 リリスと揃って悟と同じ高校へ転入します。そこへ悟の保護を目的としつつもバッチリ恋愛感情を 抱いている同級生(しかも天使)の "宮坂 麻美子" が闖入&ドタバタラブコメが展開。 これだけでも十分お腹一杯で楽しめるのですが、ただ少しだけ気になる事があって、 後半になるとある騒動が切っ掛けでヤンキー美女(といっても悪魔アスタロス)と リリスらが大バトルを繰り広げるのですが、中盤までひたすら笑える展開だったのに 急にマジバトルが展開したので笑いの糸が途切れてしまった、というか感情が素に戻っちゃいました。 勿論話は面白いし、戦闘内容に矛盾があるとか、そういう事ではないんです。 ただいっそ最初から最後まで面白おかしいラブコメ一本で通しても良かった気がしました。 あくまでも私個人の意見ですが、それ位サタンとリリスらの掛け合いが面白くて、 笑いのテンションを切られたく無かったのですよ。 そういえば悟はイエス・キリストの生まれ変わりという設定ですが、物語を見ていると イエス・キリストである必要性が全く無く、偉人聖人なら誰でも良かった様な展開でした。 悟自身も目立った台詞やアクションも殆ど無く、物語のキーパーソンであり恋愛騒動の 中心であるにも関わらず存在感が希薄でした。もっと目立たせて欲しかったなぁ。 ちなみに最後の最後、凄いサプライズがあります。サタンとリリスの正体に関する事ですが 凄く驚きました。その後改めて物語を読み直すと、あ〜確かに!と納得出来る伏線が見えており 非常に得心しました。ストーリー構成も秀作ですね。イラストも素晴らしい内容でした。 少々H描写が多いですケド・・・(笑)




千の剣が舞う空に

 【千の剣が舞う空に】  管理人評価:100点

【レーベル】 ファミ通文庫  【発行】 08/02/12  【ページ数】 本編245P
【著者】 岡本タクヤ  【イラスト】 柏餅よもぎ
【作品のキーワード】 現代,仮想現実(オンラインゲーム),心の逃避と回帰,友情


空手で世界最強を夢見ていた主人公 "速見 真一" が交通事故で夢絶たれ、その夢の矛先をオンライン格闘ゲームで 最強となる事へと向けていくお話。高校に入学しても誰とも打ち解けず、誰とも関わらず、 ただ己の目的を達するが為に生きている真一。何となく引き篭もりライフを連想しがちですが、 しかし断言します。本作は物凄いシリアスです。彼が抱えた冷たい過去・社会から抜け落ちてしまった 心を取り戻し、彼自身が新しい世界を切り開いていく成長物語です。尚、ヒロイン役の "真山 明日美" は 主人公の対極の様な存在。クラスでは誰にでも親しまれ、頼られ、人気者の美少女です。 けれど彼女もある「仮面」を被って生きており、その「仮面」の元となる辛い過去があります。 彼女も真一と同じオンライン格闘ゲームに参加しますが、それは彼女にも、彼女なりの、 過去を乗り切る為の目的がある為です。


私がこの小説を読んで感じる事。二人は形は違うけれど、どちらも若い人生の中、 実社会でも起こり得る挫折や逃避を体験しています。それを分かり易く体現していました。 話が進めば進むほど、真一と明日美が打ち解けるほど、二人を取り囲む世界は変わります。 あるいは二人から見る世界が変わるのかも知れません。 人と関わる事の大切さ・優しさ・友情等を段々と真一が理解していくさまと、 殻を打ち破った明日美の晴れ渡っていく心の進展。読んでいてとても清々しい。 題材がオンラインゲームですし、そのテーマ故にマニアックなプレイ表現や先入観として 入り辛い印象も有り得ますが、私が感じたこの作品の面白さは人との繋がりの大切さ、人生を強く生きる勇気です。 まぁライトノベルでこんなコト言うのは変かも知れませんけどね(笑) でも、本当にそう思ってしまいました。 私もMMORPGをプレイする一人として、オンラインという場所が現実逃避の場所になり得る事、 心の拠り所となる事は理解出来ます。その気になればそれだけ依存出来る場所ですしね。 劇中、そんな場所に留まった心の闇を乗り越え、人として大きく成長していく二人のドラマは 大変に見応えがあります。但し、それだけ深く関わっている二人にも関わらず 恋愛要素が一切発生しないのはライトノベルとしてはある種不健全かな?(笑) ただ、本編ラストで真一と明日美はある「運命的な出会い」を経験します。 そこから始まる何か、があるかも知れませんね。




扉の外

 【扉の外】  管理人評価:90点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 07/02/25  【ページ数】 本編264P
【著者】 土橋真二郎  【イラスト】 白身魚
【作品のキーワード】 現代,サスペンス,監禁,生還劇, かなぁ・・・ ちょっと難しい。


サイコホラーやサスペンスといったジャンルが好きなら、本書を読むと真っ先に 「ソウ」や「キューブ」といった類の映画が思い浮かぶと思います。 簡単に言えば「ある時目覚めたら見知らぬ場所に監禁されている」というものです。 そこからの脱出や生還劇、まぁ報われない惨劇系もありますが、今や定番ジャンルですね。 さて、本作品もまさにそれ。高校の修学旅行中、バスに乗り合わせたクラス全員が 何故か意識を失い、次に目覚めた時には謎のシェルターに監禁されている状態になります。 このシェルターでは生活の庇護を受ける為「あるルール」が存在し、それを守り続ける限り 生命は保証されます。庇護を捨て去る事でシェルターの外に出れますが、その場合の 生命は保証されない。この葛藤と、極限状況下の人間関係、そして庇護を受ける為 必死に「あるルール」へと身を投じる面々。これを主人公 "千葉 紀之" の視点で 映し出していきます。人間性の本質とか、ライトノベルなのに随分ドロドロした感じも ありますけど、追い詰められた人間が取るであろう不自然な集団精神がリアルに描かれています。 又、主人公を通じて決められた社会ルールへの反発心や、それに伴う自由への代償、 束縛される事を嫌う若者の本音の様なメッセージ・・・ も込められていた様に思います。 ヒロインらも沢山出てきますが、最終的に信じられるのは誰なのか、そして最後に主人公と 共に居るのは誰なのか、ラストまで本当に分かりませんでした。別に恋愛とか萌えとかは 無いのでそういう意味のヒロインではありませんけどね。全編シリアスな展開です。 常に揺れ動く人間関係や、核心部分に登場する意外な伏兵、読者の驚かせ方や 話運びはとても巧妙で、最後までドキドキする展開は本当に上手いと思います。


・・・但し、ネタは明かしませんがこれだけはどうしても言わせて下さい。 最後まで読んでも生徒らを監禁したのが誰であるとか、その手段や目的とか、 生徒らがこの先どうなるのか、等の謎は一切明かされません。 私、スッキリと終わらない作品、特に謎だらけだったり精神論で終わる話が苦手です。 でも本作品はどう客観的に見ても秀作である事は違わず、最大限の妥協として90点を付けました。 映画なり小説なり、分からないまま終わる事も手法の一つである事は認識していますが、 本作ほど何一つ解決せず、糸口が見えないまま終わる作品は珍しいかも知れません。 謎だらけで終わるのって気持ち良いですか?と聞かれれば、私の場合NO、です。




RIGHT×LIGHTB

 【RIGHT×LIGHTB】  管理人評価:90点

【レーベル】 ガガガ文庫  【発行】 08/06/23  【ページ数】 本編245P
【著者】 ツカサ  【イラスト】 近衛乙嗣(このえおとつぐ)
【作品のキーワード】 現代,魔法,ファンタジー,アクション,美少女,恋愛


いきなりB巻からの紹介となりますが、ここからでも理解出来る内容で話を進めたいと思います。 感想を挙げるにも途中からって難しいな〜とは思ったんですケド、中々に面白い作品なので取り上げますね。 といっても@A巻を交えつつこのスペースで話し切る事は無理なので; 単刀直入に、超簡潔に言います。 魔法少女のヒロイン "アリッサ" と、そのヒロインに巻き込まれる形で特殊な魔力を得た主人公 "遠見 啓介" の二人が、この世ならざる理である「魔法」を顕現させようとする秘密結社と 闘うお話・・・、という感じだと思います。ヒロインのお祖父さんがその昔何らかの理由でこの世にある魔法 を封印する訳ですが、それに反発する組織も登場、それらの所業を食い止める為(&他もろもろの理由) でアリッサらが闘う訳です。又、アリッサも組織に「実体」である体を奪われてしまい今は精神体、 啓介から常に精神力を貰って顕現する為、一種の運命共同体とも言える関係になっています。 話は結構シリアスで、主人公も家族全員海難事故で失っている・・・ 等々悲壮感はありますが、 天真爛漫なアリッサの振る舞いに翻弄される主人公や、アリッサや周囲との話の掛け合いは大変面白く、 全体的にキリっとしたストーリー展開ながらコメディ要素も上手く融合されて明るい雰囲気です。 又、巻を重ねる毎に(行動や闘いを通じて)絆が深まっていく互いの姿は見ていて嬉しくなってしまいますね。 @A巻ではアリッサ以外に合計3人もの美少女が登場し、何れも最初は様々な形で「敵」でしたが B巻迄にはある程度打ち解け、また中には啓介に恋愛感情を持っている女の子もいるので 今後の啓介との展開も見所ですね。普通に考えれば正ヒロインであるアリッサこそが 結ばれそうなものですが、本作では "友月 未由" という別ヒロインにも決定力があり、 正直言って今後の展開が全然読めないので恋愛模様がとても楽しいです。B巻ラストでは アリッサからある衝撃的な台詞も飛び出します。これから読まれる方はお楽しみに♪ まあ〆に入りますと、言うなれば物凄い目新しい作風では無い気はします。別にストーリーが 何かに似てるとかそういう訳じゃなくて、特殊な力を持った少女+騒動に巻き込まれた高校生、 的な図式は王道ですからね。けれどもストーリーの纏め方や、そこに絡めるライトノベル ならではの恋愛模様は実に巧妙・秀逸であると思います。気持ちよくスラスラと読めてしまう 心地よいテンポと、そうさせてくれるだけの完成度を実感出来るかと思います。 各巻とも、次が気になっちゃう、でもとりあえずこの巻の物語は一通り納得した! ・・・的なところまで きちんと纏めている点にも拍手。モヤモヤ残さずすっきり読み終えられるのは最高です。 B巻でも、物語の核心に迫る人物(まさかのアノ人)の存在を明らかにして終わるので次も楽しみ♪




時間商人 不老不死、売ります

 【時間商人 不老不死、売ります】  管理人評価:80点

【レーベル】 ガガガ文庫  【発行】 08/08/24  【ページ数】 本編253P
【著者】 水市恵  【イラスト】 カズアキ
【作品のキーワード】 現代,ファンタジー,ヒューマンドラマ


主人公の "トキタ" は時間商人と呼ばれる人物で、助手の女の子 "カナタ" と 猫の "ミケ" と共に不老不死の存在。自らの【時】を操り悠久を生きています。 彼らは他者に「10年間の限定的な不老不死」を与える事が可能で、 その対価としてその人物から10年間の寿命、もしくは金銭の支払いを要求します。 劇中では、不老不死を望む様々な人物と契約し、彼らがどの様に生きるのか、 又その結末がどうなるのか、それらを客観的に見届けていくストーリーとなります。 本作に登場する依頼者は、プロ野球選手 "和敏" 老いた風貌・特殊な病である少年 "健太郎" 人気絶頂の歌手 "アツミ" 。彼らは一見無関係で、オムニバス的に幾つもの話が 綴られている様に見えます。しかし、やがてそれらが一本の線で繋がっていき 全ての話の連なりが解明されていく。最後は誰もが得心し、話の纏まりに感動を 得られるんじゃないかなって思います。ちょっと面白い流れなので一見の価値有りです。 内容的に明かす事が出来ないのは残念ですが、エピソード毎の伏線の張り方やラストの回収、 物語の見せ方が見事だったと思います。又、不老不死を得た人物によっては、 思い通りの未来を描けずある種不幸とも言える人生を送る場合もあるのですが、 だからと言ってそれら10年は決して無駄ではなく、人生とは何か、 人はどうあるべきなのか・・・ などを悟る事が出来、その姿はとても素晴らしい。 ・・・とまあ、内容的には大変面白いのですが気になる点もやっぱりあります。 実はこの話、一種の劇中劇と言いますか「時間商人やその関係者から聞いた話を 劇中作家が小説にしている」という設定があります。だから登場人物の名前や 設定は一部フィクションとされますが、しかしプロ野球選手、人気歌手、という かなり具体性のある登場人物について何処までフィクション化でぼかせるのか。 又、それだけ大物の話が絡んだからこそ面白かった部分もありますので これがフィクションとされると、それはそれで残念な気持ちにもなりますしね。 ちなみに時間商人の素性や力の秘密が何一つ明かされない事も気になりました。 都市伝説的な扱いなので謎を明かさない事も一つの手法とは思いますが・・・ その割にはちょっと大っぴらに商売しすぎだと思います。特に隠されもせず 堂々とビルのテナントらしき所に入ってるしねぇ(笑) そういえばイラストが大変素晴らしいので、そこも忘れずに必見であります♪




under 異界ノスタルジア

 【under 異界ノスタルジア】  管理人評価:95点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 08/02/25  【ページ数】 本編301P
【著者】 瀬那和章  【イラスト】 u
【作品のキーワード】 現代,異世界,心霊,サイコミステリー,アクション,美少女&淡い恋模様もありますが萌え要素は無し


3年前から行方不明となっている兄 "霧崎 戒人" について、 ある大きなトラウマを抱いたまま高校生活を送る主人公 "霧崎 唯人" 。 そんな折、突如兄から助けを乞う手紙が届く。そこに協力を仰ぐべく記された「月士那探偵事務所」に 訪れた事で、この世ならざる「異界」の存在を知り、人外の闘いに巻き込まれていく唯人。 まず、作品を読み進めて一番最初に感じたものは、世界観を形作る為の「ルール」の奇抜さと面白さ。 この世界では「死」というものに独特の概念があり、人は死ぬと「異界」に落ちるとされ 「異界」とは何層にも渡って深く構築されている人外の場所。とまぁこの辺りまではありがちですが、しかし ここでの「異界」とは【魂のリサイクル工場】の様な概念で、一種の輪廻転生、下の層にいくほど魂は分解されて混ざり合い、 やがては再生されるという理屈です。しかしながら、死んだ魂らは現世への未練により 現実に戻ろうとしてしまう。その狭間で侵食を起こしてしまい、その侵食こそが現実での心霊現象となるのです。 それら事象について対応し世界のバランスを保つ為「異界使い」という異能の存在が暗躍。 基本的にお金で仕事を請け負う為、言わばゴーストバスターズですね。 最近のアニメで例えれば「レンタルマギカ」なんかもイメージが近いかも知れない。 まあそんな訳で、「月士那探偵事務所」も数ある「異界使い」組織の一つという訳です。 さて、この事務所のメンバーも破天荒揃いで大変面白い。口の悪い幼女 "レム" 荒くれ者の女傭兵 "ノイン" 麻薬中毒の元チンピラ "秋雨" そして身体に大きな秘密を持った女子高生の雑用係(&ヒロイン)の "月士那 灯香" 。 更に、最強の「異界使い」と称される灯火の姉 "月士那 蘭不"(らんぷ)。彼女はすぐに「殺すぞ」という台詞を本気で吐く 為、登場するや否や強烈なツンキャラクターとして台頭します。個性付けが最高ですね〜。 個人的にはヒロインより蘭不が大好きになってしまいました。。 そして兄の行方と失踪の秘密を探るうち、ある「異界使い」による陰謀に巻き込まれ、 やがて恐ろしくも悲しい真実を知る事になる唯人。ホラーテイストのシリアスなストーリーと 緊張感、読み手にアっと言わせる驚きの展開、そこに辿り着く為の伏線の撒き方、 どれを取っても素晴らしい出来です。強いて言えば、レムとノインの過去が 余り分からない事、蘭不がある事情で激しく憎む相手 "神楽坂 康安" についての語りが少ない事、 「月士那探偵事務所」に依頼を与える「エクスシア」という世界的魔術結社?の内容が漠然とし過ぎている事、 などがやや消化不良だったかも。まあ大した問題では無いのですけどね。 ストーリーが超秀逸であり最後まで飽きさせず、とても楽しく読ませて頂きました。 心霊&ホラー故に若干グロい描写はあるので苦手な方は御注意下さいませ。




ボクの紫苑B

 【ボクの紫苑B】  管理人評価:65点

【レーベル】 ガガガ文庫  【発行】 07/09/30  【ページ数】 本編298P
【著者】 本田透  【イラスト】 百瀬寿
【作品のキーワード】 現代,異世界,ファンタジー,ラブコメ,アクション, ジャンヌ・ダルク,ボクデレ,美少女


<!>本項は「ボクの紫苑B」の感想です。@A巻未読の方は御注意下さい。


いよいよ最終巻ですが・・・。何だか作品イメージが随分変わったなって思います。 原則ラブコメでしたし、面白おかしく終わるのかと思っていたのですが、 巻を増す毎にシリアスな話が増えてきまして、本巻に至っては全編通して 笑える要素も少なかったと思います。要所要所に笑わせようとするネタはあるのですが、 何だか今回は・・・ 妙に現実アニメのパロディが多かったです。 しかもガンダムとかコンバトラーとかキン肉マンとか・・・ 正直こうしたネタは理解出来ないには面白くも何ともないです。 他にも幾つかパロディあったと思いますけど。著者に置いてけぼりを食らった気分でした。 全体的にシリアス展開にも関わらず敵も味方も妙にヲタク発言ばかりで違和感。 こうした部分で無理やりラノベとしてのコミカルな味付けを試みたのでしょうか。 又、今回「暴力・虐待」に関する話題も多く(例えばジル・ド・レの結婚相手にどの様な 仕打ちが待っていたかなど)それらが本当か嘘かは知りませんが、 ともあれそんなリアルな話しなくていいよ・・・ と思える部分も少なくありません。 これまでもジャンヌの拷問話などで時折物語が鬱になっている訳で。。 しまいには日本の南総里見八犬伝で犬にお姫様がアレされる話(説明は控えます・・・) まで出てくるし、これはジャンヌを比喩する為の伏線??なのでしょうか。 又、最後まで疑問の残る部分もあり、@巻で紫苑がジャンヌ化の資格を失う仮説に 「処女を失う」とありますがB巻でそれが覆る様な矛盾があったり、 何故零のジル・ド・レが覚醒した場合だけ確実にジャンヌ化が望めるのか、 元々セレネ(過去、色仕掛けで零に迫った女の子)を仕向けたという事は そこでジル・ド・レ降臨の可能性もあった訳で、じゃあユングフラウ8体とか関係ない訳で。。 最初からジル・ド・レだけ狙えばいいじゃん!みたいな。 もっと言えば@巻で零が死んでたらどーする?? 零の正体(ここでは伏せますが) を考えれば早々に花音やら何やらがユング阻止しなきゃ危なかったのでは・・・!? ミネラル(ユングフラウの生命維持)が万一でも外れる事は想定していないのか。 ・・・ふぅ。まぁとりあえず私の読解力に至らない点もあるとは思いますが、 スッキリしなかったのは事実です。散々暴れ回った沙耶も解決しないままだし、 そういえばユングが和尚をどう想っていたのかも具体的に分からなかったなぁ。 まぁしかし、紫苑の成長&女の子への変化を見守る事こそがもはや本懐。 そこは十分に果たせる内容だったので満足感はありました。親友である和尚との別れに ほろっときたり、花音が本当の思いやりを持てるラストシーン等々、 実は泣けるシーンも数々あります。あー、ついでに最後だから一言、イラストはどうにも しっくりきません。特にB巻、登場人物が一同に会している口絵がありますけど 構図的にもおかしい様な。@巻より薄々感じていましたが・・・ 個人的には馴染めません。




ボクの紫苑A

 【ボクの紫苑A】  管理人評価:80点

【レーベル】 ガガガ文庫  【発行】 07/04/30  【ページ数】 本編322P
【著者】 本田透  【イラスト】 百瀬寿
【作品のキーワード】 現代,ファンタジー,ラブコメ,アクション,ジャンヌ・ダルク, ボクデレ,美少女


<!>本項は「ボクの紫苑A」の感想です。@巻未読の方は御注意下さい。


さて、本作も冒頭から思いっきりラブコメが入るので小気味良いスタートダッシュでした。 徐々に女の子として零への愛情に目覚めつつある紫苑の、 けれどもボーイッシュ&ツンツンと振る舞う、まさにボクデレパワーはA巻でも健在です。 但し、史実の "ジャンヌ・ダルク" にまつわる講釈が依然多いのは気になるかも。 段々と解説内容が深まる事で「作品の雰囲気作り」は成功していると思いますし、 易しく語られる為理解も出来るのですが、そろそろ説明過多・・・ かも知れませんね。 まぁ解説しないとその都度バックボーンは見えないのでしょうけど。 歴史をなぞるネタ作りも当初面白いと思いましたが、シリアスになるほど 楽しいラブコメが消えちゃいそうで心配です。結局どちらをメインにしたいのかなぁ。 又、全体的に「ストーリーの伏線」及び「謎解き」の対応について 消化不良の点も多かったです。特に@巻で歴史上のジャンヌ・ダルクが犬に 何をされたのか分かりませんが、A巻でも紫苑が犬を怖がるシーンがあったり、 物理的には水を操る能力しかない筈の零が「別の攻撃的な力」を使うシーンがあり、 その辺りにある謎も一切語られないまま終わるなど、まぁ他にも見回せば数点ある訳ですが。。 ひとまずこれはB巻で解明されるであろう事を期待。今回シリアスさも増すので 結果的に@巻ほど笑えるかは微妙ですが、段々と可愛さを増していく紫苑の魅力は最高なので、 新境地「ボクデレ」については今回も十分堪能出来ると思います。




ボクの紫苑@

 【ボクの紫苑@】 管理人評価:90点

【レーベル】 ガガガ文庫  【発行】 07/01/31  【ページ数】 本編322P
【著者】 本田透  【イラスト】 百瀬寿
【作品のキーワード】 現代,ファンタジー,ラブコメ,アクション,ジャンヌ・ダルク, ボクデレ,美少女


ボクデレというのは本作の造語らしいですが、外では男の子を装い一人称ボクっ子で、 いざ好きな人と一緒にいる時はデレデレするという、一種のツンデレの様なものです。 これは実際本を手に取れば即分かる事なので明かしますが、とある理由で高校生の主人公 "居待月 零" の元にやってきた従兄弟である筈の人物 "上弦 紫苑" は実は同い年の女の子。 零の事が漠然と(恋愛とまでは気付いていないがモヤモヤとした気持ち) で好きになっていきますが、零以外の人物には「男の子」という設定を貫く為、 はたから見れば常にボーイズラヴに見えるという奇妙な展開(笑) ネタとしてかなり新鮮な設定で楽しめました。 紫苑自体相当なツンキャラで、零や周囲との漫才の様な掛け合いも面白かったです。 尚、本作は単なるコメディではなく、物語が進むにつれて急転直下、 想像以上にシリアスさを帯びます。紫苑と零には、実はその生い立ちにとても重大な秘密が 隠されており、そこにはジャンヌ・ダルクやらリアルなフランス史やらがバンバン入ってきます。 もちろん小説用の味付けもある訳ですが、突如歴史の授業に変貌を遂げるので、こうした急展開に 驚いてしまう方もいるかも知れません。序盤と後半で丸っきり雰囲気変わりますからね。 しかし深々と歴史ネタが絡む割には話は大変分かり易く、現時点ではこれといった矛盾は感じさせません。 よくこれだけ面白いコメディと複雑な歴史考証を融合させ、破錠させず 綺麗に纏められたなぁ〜 なんて思いました。全3巻のシリーズものですが、 まず、この初巻は大成功と言える完成度ではないでしょうか。 イラストがちょっと独特なので、むしろこちらの方が馴染むまで大変だったかも。




リヴァースキス

 【リヴァースキス】  管理人評価:100点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 07/06/25  【ページ数】 本編313P
【著者】 佐野しなの  【イラスト】 Fuzzy
【作品のキーワード】 現代,コメディ,ファンタジー,恋愛,美少女


ここ少しの間に何冊かの満点が続いており、どうやら私、ツイてる様です。 とにかく最初から最後まで笑いっぱなしの作品でした。小説読んで爆笑・・・ って、実際「本当に声が出てしまうほど」笑える作品なんてそうそう無い。 文字だけで完全に人を笑わせるのって絶対に難しいと思うし。うん。 丁度外出した際に喫茶店でしばらく読んでいたのですが、笑いを堪えつつ (さすがにそこでは声出せないし;)ニヤニヤしてたので相当変な客だったのでは(苦笑;) ある朝、目覚めると高校生の主人公 "末村 膳" は女の子(しかも物凄い美少女!!) になっており、更にベッドには本来自分のあるべき姿【男の体】を発見。 しかしその体には "トモヨシ" と呼ばれる別の魂が憑依してしまい、その彼は 何と主人公に一目惚れ(笑) キスをする事で成仏出来ると主人公に迫りまくる トモヨシと、そんな事が出来るかとアノ手コノ手で抵抗必死の美少女版主人公。 更にはそんな見目麗しい主人公を親友までもが好きになってしまい・・・。 という感じの超痛快ドタバタ(ラブ?)コメディです。又、劇中の登場人物、 その一つ一つの個性付けが驚くほど完璧、とにかく最高だったと思います。 私がここまで笑えたのは、著者の非常に巧みな話術というか、終始行われる 主人公からのトモヨシや周囲の人々に対するツッコミ、それら文章の表現力が 物凄く上手かったからだと思います。読めば読むほど引き込まれました。 そんな中、さりげなく盛り込まれた家族愛のテーマや、本作内で撒かれた伏線(何故不思議が 起こったのか)に関する分かり易い解答、又主人公がトモヨシに抱きつつある 「友情とも愛情とも言えない複雑な感情」の見せ方。 どれも大変素晴らしいメリハリとなっております。尚、明るい本作に相応しく、 とても気持ちの良いラストも迎えられたと私は思います。とにかく明るく楽しく、 笑っちゃうけどバッチリ感動もある、何だか贅沢な一冊ですよ♪




ARISAチェンジリング

 【ARISAチェンジリング】  管理人評価:60点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 07/11/25  【ページ数】 本編306P
【著者】 中里融司  【イラスト】 うめきち
【作品のキーワード】 現代,異世界,サイキックアクション,微妙に恋愛要素も・・??


ある意味王道パターンとも言えますが、高校生である主人公 "小日向 眞也" は平凡な人間(やや武道の心得はあるが、他全てにおいて平凡)であり、 逆にヒロインである "アリサ" は凄まじい異能の戦闘能力を持っています。 とある理由で、このアリサは超常能力者らと闘う運命になりまして・・・ 後はお約束と言いますか、主人公も首を突っ込んで巻き込まれていく訳です。 要約すればそこに至るまでのドラマと、ラスボスを倒す迄のストーリーであり、 これ自体内容的には起承転結しているし文章的にも非常に読み易いです。 ただ・・・ なんというか腑に落ちない設定や展開が多いのですよ。 けれどこの疑問一つ一つ全てが本筋ネタバレに直結してしまうので、 残念ながらここでは記載する事が出来ません。。。 あえて言えば「力の対価」に関する事なんですよ。管理人の読解力不足 で無い限り、やはり「何故 "あの人達" の対価は今まで大丈夫だったの?」とか 「何故 "この人" は次の場所でも力が吸収出来ると断言出来るの?」等々、 読んだ人にしか意味は通じませんが、こうした疑問が幾つも出る気がします。 あと〜 まあ、他にもチラチラ気になるところはあったんですけどね。 主人公が超常能力を見た感想に「アニメやラノベみたい」と表現する部分も 一般人が「ラノベ」って言わないだろ〜みたいな。せめてゲームだよねぇ。 母親の死に関するトラウマも、死に至る過程がとても安っぽいので私は共感出来ず。 冒頭からやけに "委員長"(詳細は避けますがアリサと同義と考えて下さい) を気にする主人公ですが、何故そんなにも彼女を執拗に気に懸けるのか、 片思いなのか何なのか、前振りが全く無いので戸惑ってしまいました。 そういえば主人公には気の強そうな妹(澄子)もいるのですが、台詞回りから 個性的なキャラを感じさせつつも、チョイ役でイラストも無いのでがっかり。 ライトノベル的に言えば、妹キャラを出すならもう少し立たせた方が・・・? あとは最終決戦かなあ。具体的なネタバレは控えますが、 とりあえず激戦を繰り広げる割には最後意味不明な必殺技で あっけなく終わるんですよねぇ。なんか、私としては こういうのがどんどん積み重なっていった気がするんですよね〜。 ストーリーとしては十分に面白いと思うのですけれど・・・。




ケータイ少女 〜トライアングルスピリッツ〜

 【ケータイ少女 〜トライアングルスピリッツ〜】  管理人評価:75点

【レーベル】 ガガガ文庫  【発行】 07/06/24  【ページ数】 本編243P
【著者】 涼風涼  【監修】 長木一記  【イラスト】 寺田茉莉
【作品のキーワード】 現代,若干サスペンス,ファンタジー,三角関係?,美少女,恋愛


いや〜 中々面白かったです。この作品。何やら色々なメディアミックスも ある様ですが・・・ そちらは全く知りません。けれども、このノベルについては 十分すぎるほど楽しめたと思います。 全体的に明るいコメディタッチで、主人公 "結城 暁" の一直線かつ バカっぽい思考性と謎の擬人化ケータイ少女 "リン" との掛け合いが笑えます。 主人公が正義の味方気取り&熱血漢な為、言う事成す事ズレまくってます(笑) それとサブタイトルでも連想出来ますが、見所は三角関係(主人公はニブいので 主に女の子側の感情ですが・・・)かなって思います。別に浮気とかそういうのじゃないし ドロドロした感じは一切無いのでヤキモキしながら楽しめる感じです。 まぁ読んでると「ほぼアノ彼女でキマリだろうな〜」って感じに展開は読めちゃうけどね。 ちなみに後半になるにつれかなり真面目にサスペンス的要素もあるので (あるストーカー問題を解決する為主人公が東奔西走する)、何気にお笑いと恋愛一本ではなく、 予想外と言いますかシリアスなストーリー展開まで楽しめちゃいました。 ところで、結局最後までケータイ少女がどこから来たのか、どういう生物なのか… 等の設定は明かされないまま「そういうものなんだ」という大前提で 終わってしまいますので、もう少し設定付が欲しかったな〜 とは思います。 とは言え、気持ちよく&テンポよく最後まで読み切る事が出来ましたので満足感はあります。 少なめのページ数も相まって、美少女を絡めた「お手軽ライトノベル」 という方向性は成功していると思います。気軽にサクっと一冊読みたい方にお薦め。




12月のベロニカ

 【12月のベロニカ】  管理人評価:100点

【レーベル】 富士見ファンタジア文庫  【発行】 03/01/15  【ページ数】 本編285P
【著者】 貴子 潤一郎  【イラスト】 ともぞ
【作品のキーワード】 異世界,ファンタジー,中世,騎士,友情,永遠に誓う愛


私が過去に読んできた数多のライトノベル内でもトップクラスだと断言します。 読んでいる途中、気付かない間に文章のトリックにはまり、そしてそれに 気付いた時に氷解していく謎、想い、悲しみ、高度な構成力に感服致します。


世界を司る女神ファウゼルの依代(よりしろ)として "死の直前迄眠り続ける宿命" を背負う事と なるヒロイン "アマンダ" と、その幼馴染であり、ただもう一度彼女に出会う為だけに 命懸けで地位と名誉のある "騎士" の位にまで登り詰める主人公 "フレイル" 。 更に彼は生涯を賭して依代を守る事を許される不死の守護者「ベロニカの騎士」をも目指す。 劇中、「ベロニカの騎士」は名誉職であり多くの騎士にとっては名声を得る為の手段なのですが、 主人公フレイルにとっては、アマンダの運命を変えられないならせめて愛する女性を その手で生涯守り続けたい・・・ という純粋な強い想いがあります。 やがて二人は運命的に再会を遂げ、秘めている想いは深い愛情となり、 共に愛し合える僅かな時間を慈しむ様に過ごします。しかし女神ファウゼルの依代は この世の象徴とも言える存在である為、アマンダが覚醒する前に手中に収めようと 他国からも執拗に狙われ続け、それを命懸けで護衛する事となる騎士団。そんな攻防の最中 「女神から与えられた運命」・・・とでも言うのでしょうか、奇跡の偶然で出会う事となる 謎の隻腕剣士 "ハキュリー" 。その彼が背負っている禁忌とも言える過去、 そこに秘められた真実。あまりにも深く切実なる想いが主人公らと 交錯していきます。具体的に「何故彼らが出会った事が奇跡と言えるのか」は ここで明かす事は出来ませんが、やがて全てが一つに繋がり何もかもが打ち解けた瞬間、 胸の奥が本当に熱くなってしまいました。是非もう一度読みたいと思える作品です。 絶対に損をしない一冊なので自信を持ってお薦め致します。




月の盾

 【月の盾】  管理人評価:90点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 06/05/25  【ページ数】 本編364P
【著者】 岩田洋季  【イラスト】 室井麻季
【作品のキーワード】 現代,天才画家の挫折と栄光,家族愛,友情,ほのかな恋愛要素


キーワードで何となく世界観はお分かりかも知れませんが、全体的に シリアスなテーマで、とにかく徹底的に真面目なストーリーです。萌えはほぼ皆無です。 最後まで読んだ人の中には「これラノベ?」と思う人もいるかも知れません。 ヒロインである "国崎 桜花" は画家として天性の資質を持っています。 しかし彼女は身体的にも、そして「それ以外のある理由」においても 画家として成功するには致命的な欠点を持っていたのです。(ここが本作最大の秘密であり、 同時にキモなので内容は一切伏せさせて頂きます) 特に後者の理由が彼女をとてつもなく追い込んでいきますが、 それを支える懸命な兄と、立ち直る過程のヒロイン像に胸が打たれます。 彼女自身まさに薄幸の美少女と言いますか・・・ 片親である母からは暴行を受け続け、 大好きな絵は取り上げられて描く事は許されず、その母親もある日突然自殺してしまう。 その後引き取られた家庭でも、優しく注がれる家族愛に中々馴染めず困惑の日々が続きます。 こうした状況の中、桜花自身の心の成長、画家としての挫折と栄光などを描く 深いドラマである為、ライトノベルですがライト感覚は殆ど無いのが特徴とも言えます。 劇中、ある親しい人々を彼女の「絵」で救うエピソードもありますが、 全てが心に染み渡る素晴らしいお話でした。よく一冊にこれだけの感動を盛り込めたものです。 文章の構成力も見事で、アラを探そうとしても私には見つけられませんでした。 欲を言えば、ヒロインである桜花自身の恋愛要素をもう少し語って欲しかったかも。 劇中に「兄を異性として好いている」と思わせる決定的な一言があります。 しかしそれっきりで終わってしまう為、僅かに消化不良な感は残るかも知れません。




バニラ A sweet partner

 【バニラ A sweet partner】  管理人評価:100点

【レーベル】 スーパーダッシュ文庫  【発行】 未確認  【ページ数】 本編349P
【著者】 アサウラ  【イラスト】 高山瑞希×曽我部修司(シトロネット)
【作品のキーワード】 現代,ガンアクション,逃避行,美少女,女性同士の友情・愛情


最初は可愛いヒロインとガンアクション…というくだりに興味を持っただけ、 という実にミーハーなファーストコンタクトを果たした訳ですが(笑) いざ読んでみると、一寸の隙も無い、素晴らしい完成度に唖然としました。 女子高生である海棠ケイと梔ナオが、子供ながらにどれだけ深い理由で、 そして自分達にとって必要な闘いを挑む事になったのか・・・。二人にはそれぞれ ある理由から自らの家族に対し非常に強いトラウマを抱えており、 その殻を唯一打ち破る事が出来る「力」(=銃) を偶然手に入れた彼女らは、 お互いに強く決断した上でその「力」をしかるべき相手らに行使していきます。 「力=銃」という形は、必ずしもそうであるべき必要性は無かったのでしょうが、 ただ彼女達にとっては偶然手に入れた銃こそが救世主の様に見えたのかも知れません。 この作品の醍醐味は、彼女らが闘う相手は決して「巨悪な組織」という類ではなく ただ自分達にとっては避け得ない敵である・・・ という点です。 子供故の凶暴性が垣間見える事もありましたが、彼女らは決して狂気に染まっている訳ではありません。 ただ、運命に抗う術こそが必要だったのです。やがて二人は警察にも追われ、先の見えぬ逃避行が始まります・・・。 私は余り泣ける性格ではありませんが、代わりに心では泣いてしまいました。 そして更なる見所として、勿論ウリであるガンアクションの描写も素晴らしいのですが、 何より彼女達が抱えている心情を汲み取り、避け得ない逃避行の終わりを 見届ける事にあります。彼女達の迎える「精一杯の最後」を感じて欲しいのです。 ちなみに本作はイラストも抜群に凄いです。作品とイラストが完璧にマッチする ノベルなんてそうそう出会えないですよね。間違いなく最高の一冊です。 一部で、やや残酷な描写もあるので、その辺りは覚悟しておきましょう。




フォーソルティアの風

 【フォーソルティアの風】  管理人評価:80点

【レーベル】 電撃文庫  【発行】 06/11/25  【ページ数】 本編321P
【著者】 藍原みつと  【イラスト】 KeG(ケージ)
【作品のキーワード】 異世界,冒険,メカ,ファンタジー,美少女,恋愛


登場キャラクターの構図やストーリー展開がラピュタにそっくり(笑) 主人公 "ソラ" と ヒロイン "ギン" がまんまパズーとシータに…!? 古代文明の力で空に浮かぶ大陸を舞台に、ギンを助ける為に ソラや仲間達が冒険活劇を繰り広げます。敵は軍隊、更に親玉は世界を滅ぼそうとする典型的悪役でありまさにムスカ。 加えて正義の空賊まで出てきちゃったりして、これはもう誰がどう見てもラピュタやりすぎ!! ・・・と思ってしまっても仕方の無い内容であります。むしろこれでラピュタ連想するなっていう方が無理です。 まぁとりあえず、回収不完全な伏線や設定、違和感の残るストーリー展開は殆ど見られず、 最初から最後まで素直にテンポよく読み切れる良作ではあります。 ラストに控えるサプライズ(主人公ソラに隠された正体や父親の結末など) も好印象。全体的に飽きさせず、メリハリを上手く持たせている点は素晴らしいです。 惜しむらくは、敵軍のイケメン親玉 "キューソー" に仕える腹心の女性 "カーリス" の 心情をもう少し描いて欲しかった・・・ という気がしないでもありません。 淡々と世界を破滅へと導くキューソーを盲目的に心酔し、そして最後は キューソーの為にある末路を辿りますが、私には彼女が抱えている感情を 汲み取る事が出来ませんでした。そこには僅かでも愛情があるのか、 あるいは尊敬の一念だけなのか。完全なる忠誠には相応の理由がある筈ですが・・・ そこが良く分かりまま終わってしまうのが残念。敵側の重要なポジションにいる女性キャラだけに、 一種の愛憎劇をも期待していたのですが・・・ ここが少々心残りだったかと思います。 そして最後に。本作は確かに面白いのですが、どう見ても下地にラピュタが見えてしまうのが 引っ掛かってしまいます。完全なオリジナリティを感じられれば申し分無かったのですが、 現状、超有名国民的アニメに似過ぎているのはどうかな〜 なんて思っちゃいました。


inserted by FC2 system